あの日から1年が経って、いま想うこと

あの日から1年が経って、いま想うこと

平成29年3月27日、私は大切な仲間と恩師の8名を一度に失いました。

今日であの凄惨な事故から、ちょうど1年が経ちます。

あの日、現場が危険な状況にも関わらず、救助に当って頂いた警察、消防、自衛隊、そして地元山岳救助隊や那須町の方々、皆さま本当にありがとうございました。

また今日に至るまで、事故の原因究明や再発防止に向けて取り組んで頂いた検証委員会の先生や栃木県の教育委員会の皆さま、雪崩や雪氷の研究者の皆さまをはじめ、登山、学校安全に携わる多くの方々のご尽力を賜りましたこと、改めて感謝申し上げます。

自分たちが如何に多くの方に支えられ、毎日を過ごせているのか、その有難さを噛み締めて過ごした1年でした。

私は、今回の事故のことをニュースなどで見聞きするたび、事故の重大性や社会に与えた影響の大きさを改めて痛感致します。

そして今でもあの日のことを毎日思い出します。

ですが、事故のことを悔やんでも悔やんでも、いくら後悔しても8人は決して返ってきません。事故が起きてしまってからではもう遅いのです。

正直、事故の直後は「もう二度と冷たくなった友を掘り出すことはしたくない。」と思い、部活動での登山に消極的な気持ちを抱く時期もありました。

それでも、事故で生き残ってしまった私たちにできることは、同じ心境で苦しむ人をこれ以上増やさないために行動を起こすことだと考えるようになりました。

「高校生の登山は禁止」、「雪山は禁止」は決して再発防止ではなく、危険から生徒たちを遠ざけることで、生徒たちの経験や知識、判断能力が低下し、いつかまた事故の記憶が薄れてきたときに、似たような事故が繰り返されるだけです。

今回の事故が社会に大きな衝撃を与えた今だからこそ、本当の意味での再発防止の為に、組織、システム、ルール作りが必要です。また、何より先生だけでなく、私たち生徒の側も安全に対する意識改革及びその啓発活動など、当事者である私たちが動き、改善すべきと思います。

ただ、今の私にはそれだけの知識や経験はありません。そのためにはまず山や安全について、幅広く、そして深く学び、判断力を養う必要があります。

それは決して容易な道ではなく、また家族や周りの友人たちも決して、誰しもが賛同してくれる行動ではないでしょう。

それでも私にはみんなの死を決して無駄にはしないため、同じことを繰り返さないための熱意があります。この気持ちは誰にも負けることはないと自負しています。その目標に向かって、まずは一歩ずつでも歩み始めます。

いつの日か、亡くなった8人の墓前に自分の歩んできた道のりを胸を張って報告できるよう、何より8人の名に恥じぬように、この先も事故から目をそらさず、まっすぐ前を向いて進んでいこうと思います。

毛塚先生、浅井先輩、実先輩、鏑木先輩、奥、宏祐、淳生、ハギ、みんな本当にありがとう。

みんなと山に登れて本当に幸せだった。この先は天国から僕たちの事を温かく見守っていて下さい。みんなはこの先も私の一生の師、そして親友です。

平成30年3月27日

栃木県立大田原高等学校

山岳部 三輪浦 淳和

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コメント

  1. 龍崎 より:

    はじめまして。
    私も、お山が大好きです。年に30回以上、お山に入ります。雪山にも、行きます。
    どんなコメントを残したらいいのか、うまく言葉に出来ません。ただ、ただ、ブログを立ち上げる事にも、山岳部を続ける事にも、凄く勇気と決意と、何より大きな覚悟を持って実行に移された事に感動しました。
    ありがとうございました!

  2. 写真部の後輩 より:

    こんにちは。
    先輩、タラレバは厳禁ですが、タラレバを考えることは大切なことだと思います。
    先輩の辛さは僕にははかりきれませんが、これからも頑張ってください。
    あ、ラーメンありがとうございました!
    美味しかったです!

  3. 大高ob より:

    はじめまして。今朝の下野新聞の記事でこちらのブログを知り拝見しました
    雪崩事故に巻き込まれ、生還し、多くの葛藤を抱えながらも今もなお山と向き合い続けておられる三輪浦さんはすごい。
    お一人で何でも背負い込みすぎませんよう。

  4. 大女OG より:

    はじめまして。
    ブログ拝見させていただきました。
    実のことを小学生の時から知ってる者です。
    1年前、私もとてもショックを受けました。
    あなたはとても強いお方なんだとブログを読んで思いました。
    このような事件の当事者だからこそ、出来ることもあると思わされました。
    ぜひ諦めずに頑張ってください、応援しています。

  5. おと より:

    同じ年代の子どもを持つ母です。
    事故当時はもし息子が同じ目に遭ったら…と同じ親として心臓をぎゅっと掴まれるような思いでした。でも、新聞では責任問題が多く掲載され徐々に見出しのみで内容を深く読まなくなってきたのが正直なところです。
    責任を追及することも必要ですが、亡くなった彼らの命が無駄にならないよう今後も彼らの存在が光あるものとなりますよう願っています。

  6. AAA より:

    再発防止の為に、組織、システム、ルール作りをしたところで、自然にはそんなことは関係ありません。雪山に登り続けるかぎり、雪崩に捲き込まれるリスクはあります。要は覚悟があるかどうか。覚悟がないのであれば、雪山にかぎらず登山はすべきではありません。高校生の場合は自分自身だけでなく、親にも覚悟してもらう必要があります。はたして、それを部活動でやる必要があるのかは甚だ疑問です。

  7. 山本純子 より:

    あなたや、あなたの大切な友人、恩師のことを知らない人たちは
    あなたの言動に、いろいろなことを言ってくるだろう
    それがあなたの耳に入り、深く傷つくこともあるだろう
    なぜならあなたは決して強い人間ではないからだ

    しかし、あなたや、あなたの大切な友人、恩師を知らない人の中にも、あなたを応援する人は、少なからずいるだろう
    あなたの味方は、決して少ない数ではない
    なぜならあなたは決して弱い人間でも、ないからだ

    あなたは、一人ではない
    私には、あなたの苦しみ、痛みをわかることはできないが、わかろうとすることはできる
    私は、あなたの勇気を、意思を、行動を、支持する

  8. 息子がOB より:

    さすが、県北を代表する学校の生徒さんですね。立派です。

  9. R より:

    事故から一年ということで、まだ昨日のことのように
    記憶が残っていることでしょう。
    人間の脳は「忘却」というシステムを備えています。
    あなたには、辛さを徐々に忘れていって欲しいです。
    周りには、二度とこのような事故を起こさないよう、
    忘れないようにと願います。

  10. 山では後輩 より:

    1年前、悪天候の中であの急斜面を登り上げた三輪浦さんと登山部の方々に敬意を表すると共に亡くなられた8名のお仲間に心よりご冥福申し上げます。

    実際に雪崩の被害に遭われた三輪浦さんだからこその考えや思いがあると思います。
    今後も周りの声を気にする事なく発信していただけたらと思います。

    私も県北東部に住んでいるので毎日のように那須の山々、茶臼岳を目にし、遠くからでも事故の起きた場所を見るとその度に悲しみがこみ上げてきます。
    私事ですが、この冬からバックカントリースキーを始め、雪崩は一番注意しなければならない自然の驚異となりました。
    何度かのバックカントリーを経験し、雪山や道具の扱いに慣れてきて調子に乗ったり気がゆるんだりしそうな私を「調子に乗るなよ!」と那須の山を見る度に亡くなった8名の方々が戒めてくれているような気がします。

    きっと8名の方々は那須の山々での安全と三輪浦さんの事を温かく見守ってくれている事でしょう。
    今後の三輪浦さんのご活躍と健康、山での安全を陰ながら応援しています。

  11. より:

    私は山登りをしませんが応援してます。